くらべて原子力

原子力施設の基本設計をくらべるブログです。

【東海第二原発】防潮堤の施工不良問題について紹介

日本原電の東海第二原発の防潮堤の施工不良問題について紹介します。

東海第二原発の防潮堤の施工不良問題について知りたい方は、参考にしてみてください。

東海第二原発とは:茨城県にある沸騰水型(BWR)の原発

東海第二原発は、茨城県東海村にある日本原電株式会社の原発です。

2011年に発生した福島第一原発事故の原発と同じ沸騰水型(BWR)の原発で、ウランやプルトニウムの核分裂によって発生した熱によって水を蒸気へ変え、この蒸気を使ってタービンと呼ばれる大きな羽根車を回して発電する施設です。

原発では、ウランやプルトニウムなどの危険な放射性物質を取り扱うことから、万が一にも福島第一原発事故のような事故を起こして環境中に放射性物質が放出などされないように、原発の新設や再稼働のための新しいルールとして「新規制基準」が作られ、このルールを満足するようにさまざま安全対策の工事を行っています。

東海第二原発の詳細や沸騰水型(BWR)の原発、新規制基準について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

 

 

防潮堤ってなに?東海第二原発の防潮堤について紹介!

防潮堤とは新規制基準で原発に設置が求められている施設で、津波からの被害を防ぐために丈夫なコンクリートや金属でできていて、原発によって数メートルから二十数メートルの高さがあります。

東海第二原発の問題となっている防潮堤は「鋼製防護壁」といい、地上部は高さ約17m、幅約81m、奥行き約5m、地下部は南と北にそれぞれ高さ約50mの鉄筋コンクリート製の柱(「南基礎」「北基礎」)があり、南側の重量は約36,000t、北側の重量は約39,000tあり、それぞれ東京スカイツリー(約36,000t)(タワー鉄骨総重量、展望台含む)とだいたい同じくらいの重さです。

以下は、東海第二原発の「鋼製防護壁」のイメージなどです。

防潮堤の施工不良問題ってなに?発表されている内容を整理!

発表されている内容について、日本原電、マスコミ、規制庁の順番に見ていきましょう。

(1) 日本原電の発表内容

2023年10月16日-HP

日本原電の発表によると、2023年6月に「鋼製防護壁」の「南基礎」の鉄筋コンクリート製の壁面の一部が、本来コンクリートできちんと満たされていないといけないところ、コンクリートが不足してすき間が空いている状態だったことを確認しました。

また、鉄筋コンクリートの鉄筋が設計どおりの形ではなく、曲がった状態であったこともあわせて確認しました。

なお、以下のような発表が日本原電からあったのは2023年10月になってからでした。

(2) 鋼製防護壁工事において確認された事象について

東海第二発電所の防潮堤工事のうち、鋼製防護壁南基礎の工事において、2023年6月に地中連続壁部の壁面の一部に、コンクリートの未充填及び鉄筋の変形等が確認されたことから、当該工事を中断したうえで、請負会社とともに調査を行ってまいりました。今後、適切に対応してまいります。

なお、本件による東海第二発電所の既存の安全設備への影響はありません。

2023年10月16日-原子力規制庁との面談(16日付け資料だがHP公表は後日)

原子力規制庁との面談資料によると、コンクリートの不足について以下の原因であると推定しているようです。

・溝壁が掘削された状態で長期間維持され,その間,掘削機の繰返し荷重や周辺のコンクリートの打設圧による側圧,安定液と地下水位の水位差不足により,溝壁中の粘性土にはらみ出し※2が発生し,コンクリートの充填すべき箇所の閉塞や流路の阻害によりコンクリートの未充填が生じた。
・粘性土のはらみ出しが大きくなるにつれてその一部が崩落し,コンクリートの充填すべき箇所の閉塞や流路の阻害によりコンクリートの未充填が生じた。
※2 粘性土が長期間開放された際,周辺の荷重や自重により溝壁が膨らむ状況

参照:日本原子力発電株式会社.東海第二発電所 防潮堤(鋼製防護壁)の南基礎地中連続壁部で確認された事象について.2023年10月16日

 

また、鉄筋の変形について以下の原因であると推定しているようです。

なお、いずれの原因などについても、調査・検討を継続して実施しているところです。

・剛結継手部(図中の⑮)において,先行エレメントの鉄筋の建込み後に流入した土砂等の撤去作業を行った際に,既に設置していた鉄筋等に土砂等の撤去治具(ハンマーグラブ※3等)が接触し,同鉄筋等を変形させた。
・後行エレメントの鉄筋の建込み時において前記の変形部への対策は施していたものの,対策の一部に隙間があり,そこから当該変形部が後行エレメントの鉄筋に干渉し,先行エレメント及び後行エレメントの水平鉄筋が損傷に至った。また,この干渉により後行エレメントの鉄筋が剛結継手部(図中の⑮)側に引き寄せられたため,剛結継手部(図中の①)の中実部側の水平鉄筋に変形が生じた。
※3 地盤に落下させてその重量により食い込ませ土砂をつかみ取り掘削する器具

参照:日本原子力発電株式会社.東海第二発電所 防潮堤(鋼製防護壁)の南基礎地中連続壁部で確認された事象について.2023年10月16日

(2) マスコミの報道内容

2023年10月16日-NHK 首都圏のニュース

2023年10月16日付のNHKのニュースによると、ほかにもいくつかの箇所でコンクリートが不足しているようです。

地下10メートルから40メートルの間の複数か所でコンクリートが十分充てんされていなかったり、柱の骨格となる鉄筋が変形したりしていたということで、日本原電は、地盤が変形してコンクリートがいびつに固まったほか別の作業の過程で機具がぶつかり、鉄筋が変形したとみられるとしています。

参照:東海第二原発の防潮堤工事に不備 工事を中断 茨城 東海村|NHK 首都圏のニュース

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2023年10月17日-東京新聞 TOKYO Web

2023年10月17日付の東京新聞のニュースによると、もともと工事関係者から共産党県委員会へ情報提供があったようです。

今回不備が見つかった基礎部分について、共産党県委員会が同日、記者会見し、9月に工事関係者から施工不良を指摘する情報提供があったと明らかにした。県委員会は事実関係をただす質問書を原電に提出し、県と東海村には確認や対応を求める要請書を出したという。同党の江尻加那県議は「防潮堤という安全性検証のおおもとが覆された」と指摘した。

参照:東海第2原発 防潮堤工事が一部中断 コンクリート充塡に不備 共産は原電に質問書提出:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

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2023年10月17日-朝日新聞デジタル (asahi.com)

2023年10月17日付の朝日新聞のニュースによると、コンクリートが不足すると鉄筋の腐食が早く強度に心配があるようです。

原電の発表に先立ち、共産党の県議や東海村議らが県庁で会見。この工事に関わっていた元工事関係者から、現場で虚偽報告などが起きていると告発を受けたという。この関係者は「コンクリートの入っていない基礎は腐食も早く強度も保てない」と訴えている。県議らは「来年9月の工期が最優先になっているのではないか」と主張している。

参照:東海第二原発で防潮堤の基礎に隙間や変形 一部の工事中断で影響も:朝日新聞デジタル (asahi.com)

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2023年10月17日-NHK 茨城県のニュース

2023年10月20日付のNHKのニュースによると、この問題について茨城県知事は、事業者による県への報告義務はないことから特に問題ないという見解を示したようです。

これについて、大井川知事は20日の定例会見で、「工事の途中の検査で事業者がみずから問題点を発見し是正を図っている状況だと把握していて、原子力安全協定に基づく県への報告義務は無く、特に問題は無いと思う」と述べ会社側の対応に、現状、問題は無いという考えを示しました。

参照:東海第二原発 防潮堤工事に不備 知事「特に問題無いと思う」|NHK 茨城県のニュース

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2023年10月21日-赤旗

赤旗によると、「北基礎」が岩盤まで届いていないおそれがあるとのことです。

2023年10月26日-NHK 茨城県のニュース

2023年10月26日付のNHKのニュースによると、この問題の原因や日本原電の対応状況を確認するために東海村の議会がヒアリングを行うそうです。

茨城県東海村の議会は、東海第二原発で見つかった安全対策のための防潮堤工事の不備について、重大な事案で原因や会社の対応状況を確認する必要があるとして、事業者の日本原子力発電を招いてヒアリングすることを決めました。

参照:東海第二原発の工事不備で東海村議会が事業者ヒアリング実施へ|NHK 茨城県のニュース

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2023年11月8日-NHK 茨城県のニュース

2023年11月8日付のNHKのニュースによると、東海村の議会は全員協議会を開いて日本原電の担当者にヒアリングを行いました。

議員からは、「今後行う追加の工事で安全性を確保できるのか」とか「住民の関心が高く重大な事案だ。工事途中の出来事で報告の義務が無いと言うが、住民は納得しない」などと、安全性や会社側の情報公開の姿勢について質問が相次ぎました。
これに対して日本原電側は、不備が見つかった防潮堤で鉄筋を増強することや、今後、対策の決定や新たな事案の発生は適宜公表していくことなどを説明していました。

参照:東海第二原発 防潮堤工事の不備について村議会でヒアリング|NHK 茨城県のニュース

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2023年11月9日-東京新聞のニュース

2023年11月9日付の東京新聞のニュースによると、日本原電側は隠蔽について否定し、東海村議会側は迅速な報告を要望したようです。また、スケジュールへの影響は現在精査中とのことです。

日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働に向けた安全対策の防潮堤工事で不備が見つかった問題で、原電の担当者が8日、東海村議会に出席し、経緯などを説明した。公表が不備発覚の4カ月後になった理由を「原因や対策がまとまった段階で公表しようと考えた」とし、隠蔽(いんぺい)の意図を否定した。

10月16日に原電が公表するまでの間、東海村議会や周辺首長が東海第2を視察した際も不備は伏せられており、議員からはこうした点について指摘が相次いだ。原電側は「隠しているということは一切ない。判断は正しかった」と釈明。議会側は「信頼関係に関わる話なので、今後は何かあったら地元議会にはすぐに報告してもらいたい」と要望した。
 原電側は、来年9月に完了予定としている安全対策工事のスケジュールへの影響は、「現在精査している」と述べるにとどめた。

参照:東海第2工事不備 原電が説明、隠蔽は否定 村議会、迅速な報告を要望|東京新聞

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(3) 原子力規制庁の見解

2023年10月18日-原子力規制委員会記者会見

原子力規制委員会の記者会見によると、以下のような見解のようです。

  • 原子力規制委員会はこの問題についてすでに把握している
  • 現地の検査官も早期から把握していたことから事業者がこの問題を隠蔽していたとは考えていない
  • この問題は使用前検査で確認されることであり重大性のある問題だと認識していないが、使用前検査はこの問題を意識して行う
  • 工事スケジュールは事業者次第
  • 工認への影響は事業者の工事の内容次第

 

以下は、少し長いですが会見録の抜粋です。下線は本記事で追記したものです。

○記者 NHKのハシグチです。よろしくお願いします。ちょっと議題と違うのですけど、日本原電の東海第二原発のほうで、おととい発表があった防潮堤の基礎部の施工不良があったということがありました。重大事故対策の要である防潮堤に関わるものなのですけども、委員会としてどういうふうに捉えているのか、お願いいたします。
○山中委員長 日本原電から発表がございましたように、防潮堤の基礎部分でコンクリートの未充填の部分、あるいは鉄筋の曲がり等があったという報告を受けております。今後、事業者で調査・検討して適切に補修・補強がされて、工事がされるものというふうに理解をしております。当然こういうような補修・補強等についての是正活動については、日常の検査の中で適宜検査をしていく予定にしておりますし、当然のことながら使用前検査では設工認の計画に従った工事がなされているかどうか、ここについては確認したいというふうに考えています。
○記者 今回について施工不良、そもそも見つかったのは今年の6月ということで、結構前だったということだったのですけども、その日々の検査とか、日本原電は現地の規制事務所に行っていたということだったのですけど、それは上のほうというか、規制庁規制委員会のほうにも情報共有とか、どういうふうだったのでしょうか。
○山中委員長 今回、こういうの発表がございましたので、当時の状況というのは聞いております。事業者の職員から状態報告、いわゆるCRがCAP(是正措置プログラム)、是正措置会議に報告をされたということは検査官も把握しておりますし、ただ工事中のことでございますので、現時点で規制委員会が何か取り上げるほどの重大性がある問題であるというふうには、今も認識しておりません
○記者 それはそのコンクリートの未充填とか、鉄筋の変形についても、その重大とはまだということですか。
○山中委員長 現時点では適切な工事がこれからなされれば、それはもう使用前検査で確認をしていくという、そういう事案であるという理解でございます。
○記者 工事を4か月間中断していて、日本原電は来年9月ですかね、全ての安全対策工事完了という時期を掲げていますが、そのスケジュール、今後の補修工事とか、使用前事業者検査などを考えるとスケジュール的にはどういうふうに捉えていますでしょうか。
○山中委員長 これもスケジュールといいますか、補修工事の状況というのはもうこれは事業者次第ということでございますので、我々といたしましては、使用前検査をきっちりとやるという、そういうところでございます。
○記者 工程優先と十分な対策というのは、両立というのは難しいと思うのですけども、規制委員会としては日本原燃にどういうところを求めていきたいと思いますか。
○山中委員長 適切ないろいろ補修あるいは補強工事がなされるものというふうに考えておりますし、それは事業者自身が適宜行うところかと思います。
○記者 今回見つかった防潮堤の後ろの部分なのですけども、ほかの工事も、今工事が行われて、完了しているところもあるのですけども、そういうところへのさらなる調査等は求めはしない。そこも検査でということですか。
○山中委員長 当然、その使用前検査で設工認の計画どおりに行われているかどうかについては、きっちりと見ていくつもりにしておりますし、今回こういう不具合があったということは頭に置いた上で、当然検査官も検査をしに行くということになろうかと思います。
○記者 それに今後、設工認の補正だったりとか、そういった審査・検査への影響というのは、今回の事象、どういうふうなものが。
○山中委員長 これは事業者の判断で、例えば設工認にないような工事を仮に行うということになれば、当然変更は必要になってまいりますので、変更が事業者からなされるということになろうかと思います。
○記者 フリーランス、マサノです。よろしくお願いします。先ほどの東海第二原発の防潮堤の工事の件なのですけれども、聞くところによりますと10月16日に共産党が記者会見をすることが分かってから、規制庁に日本原電は報告に行ったということを聞いています。それに対して、日本原電は隠蔽していたのだという批判がありますが、どのようにお考えでしょうか。
○山中委員長 先ほどもお答えをさせていただきましたけれども、現場では状態報告、CRというのがCAP会議でも報告をされておりますし、事業者自身、隠蔽をするつもりがあったというふうには考えておりませんし、現場の検査官もその時点で把握していたというふうに聞いております。工事自身、適切に行われるものというふうに私自身も思っておりますし、工事の最中でございますので、規制委員会が今、現時点で何かこの問題について、問題にするということは考えておりません。
○記者 なるほど。そうすると6月の時点から、もう現場の検査官は御存じだったということでしょうか、規制庁。
○山中委員長 そのように聞いております。早い時点で検査官は知っていたということでございます。

参照:原子力規制委員会.原子力規制委員会記者会見録(令和5年10月18日)

防潮堤の施工不良問題のこれからの動きは?

2023年10月20日まで

日本原電により現在原因を調査中ですが、2023年10月17日付の朝日新聞のニュースによると、コンクリートの不足の一因として粘土質の地盤の影響が考えられているようです。

隙間が生じたことについて原電は、地下の地盤が粘土質で周りの土などが入り込んでコンクリートが流れなかった可能性があると説明。鉄筋の変形は、掘削する際に重機が当たった可能性があるという。

参照:東海第二原発で防潮堤の基礎に隙間や変形 一部の工事中断で影響も:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

下の図(赤枠は本説明のため追加)の「Ac」と書かれた青色ハッチングは粘土質をあらわしていて、「鋼製防護壁」の「南基礎」「北基礎」ともに粘土質に囲まれていることから、場合によっては今後「南基礎」だけではなく「北基礎」でも、「南基礎」と同じような施工不良がみつかるかもしれません。

2023年10月21日から

原子力規制庁との面談資料(16日付け資料だがHP公表は後日)によると、「北基礎」でも「南基礎」と同じような施工不良を確認し、これらの原因について調査・検討を継続するとともに、以下のとおり、対策と他施行箇所の影響範囲についても調査・検討を実施中とのことです。

3.対策 上記の推定原因に対する調査・検討結果を踏まえて,今後,適切な補修・補強計画を立案する。
4.他施工箇所の影響範囲 上記の推定原因に対する調査・検討結果を踏まえて,他施工箇所の影響範囲についても確認していく。
なお,鋼製防護壁北基礎においても,本事象と類似する状況が確認されており,これについても調査・検討を実施中である。

参照:日本原子力発電株式会社.東海第二発電所 防潮堤(鋼製防護壁)の南基礎地中連続壁部で確認された事象について.2023年10月16日

 

 

防潮堤の施工不良問題の評判・口コミは実際どう?感想・レビューについてまとめ

ここではこの問題についての評判・口コミをみていきましょう。

2023年10月20日まで

2023年10月21日頃から(わかりやすさから21日以前も含む)

評判・口コミを調査したところ、施工不良やスケジュール優先文化、原子力規制庁の審査に対する不安や心配があることがわかりました。