くらべて原子力

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どうして原発はPWRとBWRばかりなの?日本で採用された原発のタイプについて解説!

福島第一原発事故以降、川内原発や美浜原発などの西日本に多いPWRは再稼働を果たしていますが、柏崎原発や東海第二原発などのBWRはいまだ再稼働に至っていません。

そもそも日本にはPWRとBWRという2種類の原発のタイプがメジャーですが、なぜこれらの2種類が多く作られることになっているのでしょうか。

今回はPWRやBWRがメジャーになっていった経緯について解説します。

PWRやBWRがメジャーになっていった経緯について知りたい方は、参考にしてみてください。

原子力の平和利用のはじまり!日本はどの原発のタイプを選択すればよいの?

1950年代から石油や石炭、天然ガス以外の新たな発電のためのエネルギー源として、原子力の平和利用が国際的に注目を集めていました。

日本でもこのような流れを受けて1955年に原子力について法律で整備することに始まり、原発の研究開発を世界でさきがけて始めていた米国や英国に協力を求め、日本での原発の建設について検討を始めました。

原発の種類としては、当時から世界でさまざまタイプが研究開発されていましたが、どのタイプが技術的・経済的に有利かどうかは、まさに世界中で研究開発の途中であったことから簡単に結論が出せるものではありませんでした。

そのような事情もあったことから、当時の日本政府は商業用の原発として比較的有望だと考えられていた以下の3つのタイプの原発を建設の候補としていました。

  • 英国型:黒鉛減速ガス冷却炉(GCR:Gas Cooled Reactor)

もともと兵器用のプルトニウムを生産するために英国で開発されました。燃料には濃縮を必要としない天然のウランを使用し、発生する中性子を減速させて核分裂しやすくするために減速材に黒鉛ブロックを、燃料から熱を奪うために炭酸ガスを用いました。さらに蒸気を発生させタービンを回すために、この炭酸ガスと水を接触させる複雑な作りをしています。

参照:ジョン・F.ホガートン.原子力の安全性に関する基礎知識

 

  • 米国型:加圧水型軽水炉(PWR:Pressure Water Reactor)

もともと潜水艦に取り付ける動力源として米国ウエスチングハウス社(WH社)により開発されました。燃料には濃縮ウランを使用し、発生する中性子を減速させて核分裂しやすくするために減速材に水を、燃料から熱を奪うために水を用いました。燃料から水を使って熱を奪うさいに、加圧された高温の水を使い、さらに蒸気を発生させタービンを回すために、この水と別の水を接触させる複雑な作りをしています。

参照:ジョン・F.ホガートン.原子力の安全性に関する基礎知識

 

  • 米国型:沸騰水型軽水炉(BWR:Boiled Water Reactor)

WH社により開発されていたPWRに対抗する商業用の炉として米国ゼネラルエレクトリック社(GE社)により開発されました。PWRと同様に燃料には濃縮ウランを使用し、発生する中性子を減速させて核分裂しやすくするために減速材に水を、燃料から熱を奪うために水を用いました。ただし、PWRなどと異なり、直接水を沸騰させてタービンを回す単純な作りを特徴としています。

参照:ジョン・F.ホガートン.原子力の安全性に関する基礎知識

当時メジャーな3つの原発を紹介!

ここでは上の3つのタイプの代表的な当時の原発を紹介していきます。

GCR:世界初の商業用原発!コールダーホール原発

参照:日本原子力産業会議.原子力読本.1957年

コールダーホール原発は、英国北西部のセラフィールドにあり、世界で初めて本格的な商業用原発でした。

この原発の主な目的は、英国の核兵器級プルトニウムを生産することでしたが、発電にも使われていました。

下の写真は原子炉の屋根部で制御棒や燃料棒を出し入れさせています。

参照:K.ジェイ.原子力発電所 : コールダーホール物語.1957年

下の写真は原子炉の運転室で、右側時計の下に炉や熱交換器などの設備の動きが一目でわかるようにメータ類が配置されています。

参照:K.ジェイ.原子力発電所 : コールダーホール物語.1957年

下の左の写真は建設中の原子炉の炉心上部、下の右の写真は原子炉の熱交換機です。

参照:日本原子力産業会議.原子力読本.1957年

コールダーホール原発は、1956年10月17日にエリザベス2世女王によって正式に運転を開始しました。

参照:K.ジェイ.原子力発電所 : コールダーホール物語.1957年

PWR:アメリカで最初の大規模商業用原発!ヤンキーロウ原発

参照:ジョン・F.ホガートン.原子力の安全性に関する基礎知識

ヤンキーロウ原発は、米国マサチューセッツ州にあり、アメリカで最初の大規模商業用原発として1961年に商業運転を開始しました。

BWR:GE社が威信をかけて開発した大規模商業用原発!ドレスデン原発

参照:日本生産性本部.アメリカの建築産業 : 第2次建築専門視察団報告書.1960年

ドレスデン原発は、米国イリノイ州にあり、アメリカで最初のBWRとして1960年に商業運転を開始しました。

参照:日本生産性本部.アメリカの建築産業 : 第2次建築専門視察団報告書.1960年

参照:原子力発電研究委員会.沸騰水型原子力発電所の設計検討.1958年

参照:ジョン・F.ホガートン.原子力の安全性に関する基礎知識

どの原発のタイプが経済的なの?当時の見積もりをチェック!

これら上でご紹介した英国型GCR、米国型PWR、米国型BWRの3つの原発のタイプのうち、どの原発のタイプが経済的に有利なのか、当時いくつも検討がありましたが、このうち日本興業銀行(現みずほ銀行の前身1行)の調査部による検討をご紹介いたします。

当時の日本興業銀行は、英国や米国から売り込みの対象となっていた英国型GCR、米国型PWR、米国型BWRについて、資本費(建設費含む)、燃料費、直接費や関連費を考慮し大雑把な発電コストの計算を行いました。

なお、原発のコストを推測するうえで、原発自体がまだ開発段階にあること、信頼できる情報が少ないことなどの課題があったことなどから、あくまで当時のいくつもあった検討のひとつとして参考にしてみてください。

参照:日本興業銀行調査部.興銀調査月報 (16).1958年

英国型GCR::導入に当たっては耐震補強や小型化が課題!5円49/KWh

英国原子力庁の提供資料や第1次訪英調査団報告書に加え、耐震補強費や重量・大型機器の輸送などを考慮し計算した結果、5円49/KWhとなりました。

コストについて以下のように評しており、結果して英国型GCRは以降日本で建設されることはなかったことから、このときの日本興業銀行調査部による見通しは正しかったといえます。

コールダーホール型はその設計が,セラミック燃料の使用,或いは低濃縮ウランへの切替等により,革命的に変化し,コンパクトな構造とならなければ或いは建設費低下には限度があるのではないかと見ることも,現在としては寧ろ現実的であるかも知れない。

米国型PWR:加圧水など本当に使えるのか!?技術的に大丈夫?5円65/KWh

WH社の提供資料や米国原子力委員会の報告、電力会社の見積もりなどを考慮し計算した結果、5円65/KWhとなりました。

コストについて以下のように評していますが、加圧水を使うことについての当時の技術的に困難という認識をくつがえすかたちで、現実には日本では西日本を中心にメジャーな原発のタイプとして多く建設されています。

ヤンキー型は最も高コストの位置に残されるわけであるが,これは同型の燃料費が他に原子力2型に比し,かなり割高であるためであり,この型はより高い比出力,或いはより高いBurn upを得る如き,技術的改善が可能であるかどうかが,今後の発展性をトすることになろう。加圧水を使用するという若干無理のある設計から,これに対し疑問視する向きもあるようであるが,決定的なことは判らない。

米国型BWR:単純な作りで熱効率・建設費が安そう!4円44/KWh

GE社の提案書や東京電力による試算を考慮し結果、4円44/KWhとなりました。

コストについてPWRと比較して下の3点の特徴を挙げたうえで、この当時PWRよりもむしろBWRのほうが有望視されていたことがうかがえます。

PWRが高圧軽水を冷却材に使用し,その沸騰を避けるのに対し,この型では,原子炉及び2次蒸発器で沸騰した蒸気を直接タービンの駆動に使用するもので、次のような特徴が認められる。

  • a. 主回路に於いて,熱交換機を使用しないため,熱効率が良好なこと。
  • b. aによる系統単純化のため,原理的に建設費が廉いこと。
  • c. 但し建設技術並びに運転技術に於いてはPWR型よりかなり難しいと思われること。

c.については,既に1956年末に臨界に達したアルゴンヌEBWRの経験等から,当初予想された如く困難なものではないといわれるが,未だ確認し得る時期ではないこの点が克服されれば,差当りの実用炉として,相当有望なものと推測される。

結局どの原発のタイプが採用されたの?その後の原発建設についても簡単に紹介!

結局1960年代後半から70年代初頭にかけて、英国型GCRとして東海発電所(1966年運転開始)が、米国型BWRとして敦賀1号(1970年運転開始)が、米国型PWRとして美浜1号(1970年)がつぎつぎと建設され運転を開始していきました。

  • 東海発電所:英国型GCR。英国ゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GEC)から技術導入し、富士電機グループが製作。
  • 敦賀1号:米国型BWR。ゼネラルエレクトリック社(GE社)が製作。のちに東芝や日立製作所が技術導入。
  • 美浜1号:米国型PWR。ウエスチングハウス社(WH社)から技術導入し、当時の三菱原子力工業(のちに三菱重工業と合併)が製作。

このあとも原発の建設はつぎつぎと続きますが、英国型GCRだけは、燃料の天然ウランを頻繁に取り換えることが必要なこと、炭酸ガスが熱を伝える効率が悪かったことなどから経済性が課題となり、同じタイプの原発はこれ以上日本で建設されることなく、すでに建設されていた同じタイプの東海原発も1998年に運転が終了しています。

こうして日本では、1960年代から運転を開始しいくつものトラブルはあったものの、原発の「改良標準化」など努力を経て、商業的に成立していたPWRとBWRという2種類のタイプの原発がメジャーとなり、PWRとBWRの建設や運転が続くことになったのでした。

口コミ・評判は実際どう?【原発のタイプごとの感想・レビュー】

ここでは原発のタイプごとの口コミをみていきましょう。

順番に確認してきましょう。

GCRのいい評判・悪い評判・口コミ

GCRの口コミを調査したところ、導入までの経緯や売り込みの激しさについての評判があることがわかりました。

PWRとBWRのいい評判・悪い評判・口コミ

PWRとBWRの口コミを調査したところ、古い原発の廃炉などの評判があることがわかりました。