くらべて原子力

原子力施設の基本設計をくらべるブログです。

【福島第一原発】ALPS汚染廃液の飛散による作業員の被ばくについて紹介

東京電力の福島第一原発のALPS汚染廃液の飛散による作業員の被ばくについて紹介します。

ALPS汚染廃液の飛散による作業員の被ばくについて知りたい方は、参考にしてみてください。

ALPSとは:福島の汚染水から放射性物質を取り除くための設備

ALPSは、福島県にある東京電力の設備です。

ALPSは、2011年に発生した福島第一原発事故で環境へ放出された放射性物質により汚染された水(「汚染水」)から放射性物質を取り除くための設備で、正式には「多核種除去設備(ALPS:Advanced Liquid Processing System)」といいます。

東京電力によると下のような設備で、セシウム、ストロンチウム、ヨウ素、コバルトなどの放射性物質を、薬液によって沈殿処理したり、活性炭・吸着材で吸着したりして、浄化処理することができるとのことです。

ALPSは、運転を続けているうちにALPSのなかの汚染水などがとおる配管の内側に炭酸塩という化合物がたまってしまうことから、これを硝酸という薬液で溶かして配管の内側を洗浄する作業が必要です。

今回飛散した液体は、ALPSの配管の内側を洗浄するための硝酸と汚染水とが混ざり合った廃液(「汚染廃液」)のようです。

「ALPS処理水」とは、東京電力福島第一原子力発電所で発生した汚染水を多核種除去設備(ALPS:Advanced Liquid Processing System)等によりトリチウム以外の放射性物質を環境放出の際の規制基準を満たすまで繰り返し浄化処理した水のことです。
東京電力福島第一原子力発電所では、原子炉の内部に残る、溶けて固まった燃料(燃料デブリ)を冷却するために水をかけ続けていること、雨水や地下水が原子炉建屋内に流入することなどにより、高い濃度の放射性物質を含んだ汚染水が発生しています。
発生した汚染水に対しては、そのリスクを下げるために、いくつかの設備を使用して放射性物質を除去する浄化処理がおこなわれます。まず、汚染水は「サリー」や「キュリオン」という装置に通されて、セシウムやストロンチウムが浄化処理されます。次に、淡水化装置を経て淡水が分離され、その淡水は原子炉の冷却水として使用されます。濃縮された水は、ALPSによりトリチウム以外の62種類の放射性物質が規制基準を下回るまで浄化処理されます。ALPSでは、セシウム、ストロンチウム、ヨウ素、コバルトなどの放射性核種を、薬液によって沈殿処理したり、活性炭・吸着材で吸着したりして、浄化処理することができます。繰り返しALPS処理することによりほとんどの放射性物質は取り除かれますが、水素の放射性同位体である「トリチウム」は水分子の一部になって存在しているため、ALPS等の処理で取り除くことができません。

参照:環境省.「ALPS処理水」とは ~汚染水の浄化処理~.2022年3月31日

 

 

ALPS汚染廃液の飛散による作業員の被ばくってなに?発表されている内容を整理!

発表されている内容について、東京電力、マスコミの順番に見ていきましょう。

(1) 東京電力の発表内容

2023年10月25日-HP

東京電力の発表によると、ALPSの配管の洗浄を行っていた5人の作業員のうち、全員の吸入による内部被ばくのおそれが低いことを確認しました。

しかし、5人の作業員のうち4人の外部被ばくを確認し、4人のうち2人は除染できましたが、残り2人は除染ができなかったことから、病院へ搬送されているそうです。

本日(10月25日)午前10時40分頃、増設ALPSのクロスフローフィルタ出口配管(吸着塔手前)の洗浄を行っていた協力企業作業員5名に、配管洗浄水またはミストが飛散しました。午前11時10分頃、このうち協力企業作業員1名の全面マスクに汚染が確認され、またAPD(β線)の鳴動を確認しました。
身体汚染の可能性があると連絡があった協力企業作業員5名のうち1名は身体汚染が確認されておらず、身体汚染があった作業員4名のうち2名は除染が完了しておりますが、残り2名につきましては現在も身体汚染が残っています。なお、作業員5名の鼻腔スミヤを行ったところ、内部取り込みは確認されませんでした。
身体汚染が残っている2名につきましては、汚染レベルは下がってきておりますが、退出基準(4Bq/c㎡)以下までの構内での除染は困難であると午後7時23分に判断し、福島県立医科大学附属病院へ搬送します。なお、救急医療室の医師の診断の結果、放射線障害による熱傷の可能性は低いと判断されました。

参照:東京電力ホールディングス.福島第一原子力発電所 協力企業作業員における放射性物質の付着について.2023年10月25日

2023年10月26日-HP

東京電力の発表によると、除染ができなかった2人は除染と経過観察のため入院することになりました。

なお、この2人について、傷口から放射性物質が入るといったおそれが低いことをあわせて確認しています。

発電所構内で除染が完了しなかった協力企業作業員2名について、その後の状況をお知らせします。
昨日(10月25日)午後10時25分に福島県立医科大学附属病院に到着し、医師の受診と除染を開始しました。
その後、医師の判断により除染の継続ならびに経過観察のため入院しました。
なお、汚染部位の皮膚への外傷は確認されていません。

参照:東京電力ホールディングス.福島第一原子力発電所 協力企業作業員における放射性物質の付着について(続報).2023年10月26日

2023年10月26日-廃炉・汚染水・処理水対策チーム会合

経済産業省の廃炉・汚染水・処理水対策チーム会の資料(東電作成)により、発生状況と汚染の原因、ホースが外れた原因、対策が示されました。

3.発生状況
◼ ALPSの運転に伴い配管内に溜まった炭酸塩を硝酸で溶かして洗浄する作業を実施
◼ 配管内部に溜まった炭酸塩と洗浄薬液(硝酸)の反応によって発生したガスが、受入タンク内のホース先端部から勢いよく排出されたことによりタンクからホースが飛び出し、近傍で作業を実施していた協力企業作業員2名に洗浄廃液が飛散し、汚染した。
◼ 飛散した洗浄液を清掃した作業員のうち2名は、清掃時または装備(アノラック)脱衣時に 汚染したものと推定。

5.汚染した原因
◼ 薬注ポンプで注入中、発生するガスの発生に合わせてポンプの起動・停止を繰り返していたが、作業員Cは、受入タンクの水位上昇やホースが動くことがなかったため、タンク監視を作業員Aと一時的に交代し、別エリアで行っていた作業場に移動。
◼ 作業員Cが作業員Aと一時的に交代した際、作業員Aにアノラックを着用させなかった。
◼ その後、ホースからの飛散が発生し、タイベックに付着・浸透し汚染。
◼ また、タンク近傍にいた作業員Bについてもタイベックに付着・浸透し汚染。
◼ 作業員D、Eについては、清掃時または装備(アノラック)脱衣時に汚染したものと推定。

6.ホースが外れた原因
◼ 仮設ホースの固縛の位置はタンクから距離があったため、炭酸塩と硝酸の反応で発生したガスが勢いよく排出した際にホース先端がタンクから飛び出した。
◼ なお、炭酸塩と硝酸の反応によってガスが発生することは認識していたため、仮設ホース内のガス発生状況を監視しながら洗浄作業を実施していたものの、過去に実施してきた同作業において、ホースがタンクから外れる程のガスの排出は経験がなかった。

7.対策
◼ 飛散させない対策
• 勢いよくガスが排出された場合でもホースが飛び出さない適切な固縛位置を計画する。
• 工事監理員および工事担当者は、計画通りの固縛位置になっていることを作業開始前に確認することとする。
◼ 汚染させない対策
• 作業に適した装備の徹底を図る。水を扱わない作業者であっても、水の飛散により汚染する恐れがある場合は、アノラックを着用する。

2023年10月28日-HP

東京電力の発表によると、除染ができなかった2人は除染を行い病院を退院したとのことです。体調や放射線障害などは確認されていないそうです。

発電所構内で除染が完了しなかった協力企業作業員2名について、その後の状況をお知らせします。
経過観察のため入院していた2名の協力企業作業員について、病院での除染を行い、本日退院しています。
なお、現時点で、2名の協力企業作業員の体調面に問題はなく、汚染部位の皮膚に外傷や放射線障害による熱傷は確認されていません。

参照:東京電力ホールディングス.福島第一原子力発電所 協力企業作業員における放射性物質の付着について(続報2).2023年10月28日

2023年11月16日-HP

東京電力の発表によると、以下の3つの原因により洗浄廃液が飛散して作業員が被ばくしたとのことです。

  • 弁操作による配管の閉塞(原因①)(新規発表)
  • 不十分な固縛位置(原因②)
  • 不十分な現場管理体制・防護装備(原因③)

参照:東京電力ホールディングス.増設ALPS配管洗浄作業における身体汚染発生を踏まえた対応について .2023年11月16日

特に原因①については、ALPSの配管の内側を洗浄するための硝酸を普通に流し続けると汚染廃液の量が多くなってしまうことから、硝酸が配管の内側にとどまる時間を長くするために配管の下流に付いている弁を絞ることにしましたが、配管の内側から剥がれ落ちた炭酸塩が絞った弁ところで詰まってしまい一時的に閉塞し配管の内側の圧力が上昇、やがて炭酸塩が溶けて詰まりが解消されたところで一気に汚染廃液が噴き出したということがあるようです。

参照:東芝エネルギーシステムズ株式会社.福島第⼀原子力発電所における身体汚染発生に関する調査結果・原因と再発防止対策について.2023年11月16日

(2) マスコミの報道内容

2023年10月25日-NHK、読売、朝日

2023年10月25日付のNHK、読売、朝日のニュースによると、100mLの汚染廃液が飛散したため除染したようですが、5人の作業員うち2人は除染をしても股間付近や両腕の表面での汚染が基準値である4Bq/cm2以下に下がらなかったことから病院へ搬送されたようです。

東京電力によりますと、25日午前10時40分ごろ、協力会社の作業員5人が、汚染水が通っていた配管の内部を洗浄する作業中、放射性物質を含む廃液を流すタンクにつながるホースが外れ、およそ100ミリリットルの廃液が周囲に飛び散りました。

参照:汚染水の処理設備 作業員5人に放射性物質を含む廃液がかかる―NHK

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5人とも防護服を着ていたが、うち2人は除染をしても体表面の汚染が基準値(1平方センチあたり4ベクレル)以下に下がらなかった。

参照:汚染水の処理設備 作業員5人に放射性物質を含む廃液がかかる―yomiuri

Web Archive

除染したが、うち2人は股間付近や両腕の表面で原発を出る基準濃度(1平方センチあたり4ベクレル)を下回らなかったため、福島市内の病院へ搬送する。ただ、原発構内の医療室の医師の診断では、放射線障害による熱傷の可能性は低いと判断されたという。

参照:福島第一原発で作業員が汚染廃液を浴びる ALPSの配管洗浄で飛散―asahi

Web Archive

2023年10月26日-朝日

2023年10月26日付の朝日のニュースによると、病院へ搬送された2人の作業員は除染と経過観察のため引き続き入院しますが、体調に特段の変化はないそうです。

東京電力福島第一原発の汚染水から大半の放射性物質を除去する「多核種除去設備(ALPS=アルプス)」で、配管を洗浄した廃液を作業員が浴びた問題で、東電は26日、20代と40代の男性作業員2人が除染の継続と経過観察のために入院したと発表した。
東電によると、医師の診断で2人とも放射線障害による熱傷の可能性は低いと判断されていて、汚染部位の皮膚の外傷も確認されていない。体調にも特段の変化はないという。

参照:福島第一原発で汚染廃液あびた作業員2人入院 除染と経過観察のため―asahi

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2023年10月27日-河北新報

2023年10月27日付の河北新報のニュースによると、2人の作業員は汚染を防ぐためのかっぱを着用していなかったようです。

2人は全面マスクと防護服を着用していたが、直接廃液を扱う担当ではなく、身体汚染を防ぐかっぱは着ていなかった。汚染水関係の現場ではかっぱ着用が必要だったという。

参照:福島第1原発 廃液付着の2人が入院 汚染防ぐかっぱ着用せず―河北新報

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2023年10月27日-NHK

2023年10月27日付のNHKのニュースによると、東京電力はルールの見直しを検討しているようです。

東京電力は26日の会見で、今回の作業中には着用するべきだったという考えを示し、監視役も含めてカッパを着用するようルールの見直しを検討するとしています。

参照:福島第一原発 廃液かかるトラブルで東電はルール見直しを検討―NHK

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2023年10月30日-朝日

2023年10月30日付の朝日のニュースによると、東京電力は飛散した汚染廃液の量を訂正しました。

東電は、入院した2人のほかに現場で作業をしていた3人への聞き取り結果から、飛び散った量を約100ミリリットルと判断。その後、退院した2人に元請け企業を通じて聞き取り調査をした結果、数リットルだったことが明らかになったという。
東電は30日の記者会見で、具体的な飛び散った量については「計算できず、分からない」と説明した。

参照:福島第一の廃液飛散量「数リットル」に訂正 当初は「約100ミリ」―asahi

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2023年11月1日-NHK

2023年11月1日付のNHKのニュースによると、原子力規制委員会の会合で、委員から作業管理の問題などが指摘されたようです。

これについて、1日に開かれた原子力規制委員会の会合では、委員から「廃液がかかるトラブルは当然、想定されるべきものだ。作業前に意味のある安全確認がされていたのか疑問だ」とか、「作業管理上の失敗は明らかだ。原因を究明するために、しっかり検査すべきだ」などと、東京電力の管理体制を問う声が相次ぎました。

原子力規制委員会の山中伸介委員長は「個人的な見解だが、東京電力の実施計画違反ではないかと思っている。報告を待たないといけないが、下請け会社の作業員の作業中に生じたことでも、東京電力自身が実施計画をきっちり守るという管理のありようが不十分だったと思っている」と述べ、廃炉作業のルールや安全対策を盛り込んだ実施計画に違反があったという認識を示しました。

参照:福島第一原発 作業員に廃液で規制委 管理の問題など指摘相次ぐ―NHK

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2023年11月16日-日本経済新聞

2023年11月16日付の日本経済新聞のニュースによると、弁を閉める作業は作業予定になかったこと、ホースの位置が適切ではなかったこと、作業上のルール違反があったことが報じられました。

作業を請け負った東芝エネルギーシステムズから調査報告書を受け取った。作業予定になかった弁を閉める作業を実施したことでホースが外れ、放射性物質を含む廃液が作業員にかかったという。ホースの敷設位置が適切でなかったほか、作業班長の不在というルール違反もあった。

参照:東電、作業員の廃液汚染で調査公表―日本経済新聞

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2023年11月16日-NHK

2023年11月16日付のNHKのニュースによると、弁を閉める作業は作業予定になかったことについて、予定を変更する際のリスク確認の仕組みがなかったとのことです。

いずれも現場の判断で行った操作でしたが、予定を変更する際に元請け会社などがリスクを確認する仕組みはなかったということです。
これを受けて東京電力は、元請け会社に対し、予定外の操作を行わないことや、作業管理の徹底などを求めたということです。

参照:福島第一原発 “予定外の操作で廃液飛散” 東電 調査結果公表―NHK

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(3) 原子力規制庁の見解

2023年11月1日-原子力規制委員会

原子力規制委員会によると、以下のような見解のようです。

  • 本件は、作業分担などについての現場判断やガスの発生などの作業管理を含めて保安検査のなかで確認し、特定原子力施設監視・評価検討会などを通じて適宜公表する
  • 放射性物質を含んだ溶液を浴び除染の状況を考慮した被ばく線量評価は東京電力にて実施中。放射線量(cpm)の限界値については今後確認予定。

 

以下は、少し長いですが議事録の抜粋です。下線は本記事で追記したものです。

○山口長官官房総務課事故対処室長
事故対処室長の山口でございます。
本日、トピックスで御用意しております資料の10ページから御覧いただければと思います。
こちらの資料は東京電力の方から面談で説明を受けた資料そのものになってございますけれども、今回の事象でございますが、増設ALPS(多核種除去設備)の配管の洗浄作業を行っていた際に、この洗浄の廃液が作業を行っていた作業員の方に飛散して汚染をしたというものでございます。
10ページの下の図のとおり系統を隔離いたしまして、仮設の配管ホースを取り付けて、廃液を洗浄の受入れタンクの方に受けると。このタンクに設置しておりました仮設のホースから飛散があったというものでございます。
次の11ページを御覧いただけますでしょうか。上の表のところに今回汚染をした作業員の方の汚染の状況についてまとめられております。当初、汚染があったとされた方は5名いらっしゃいまして、最後、東京電力の方で除染を行いまして、除染し切れなかった方が2名いらっしゃいます。上のA、Bという2名の方ですが、こちらの方が除染できなかったものですから、外部の病院の方に搬送し、除染、治療、入院という形になったということでございます。
内部被ばくにつきましては、施設内でスミアを実施した結果、異常はなかったということと、それから、APD(電子式線量計)でございますけれども、警報設定値、一番上にございますけれども、ガンマで0.5mSv、ベータで5mSvという設定値に対しまして、今回、Aという作業員の方がベータで6.6mSvということでAPDの警報の鳴動があったと聞いてございます。
今回、汚染に至った原因でございますけれども、11ページの下の方にございますけれども、今回、タンクの水位上昇で、通常、ホースが動くことがなかったということで、点検作業を見ていた方が別の方に代わられて、その別の方のときに飛散があったということで、装備の違いが若干、上の表にもございますが、ございます。A、Bの方はC、D、Eの方に比べて比較的軽易な装備で作業を行っていたということが分かってございまして、この軽易な方に除染できないほどの汚染があったというものでございます。
次のページ、12ページでございます。上の方にタンク周りのイラストがございますけれども、ここでの仮設のホースが外れまして、外れたわけでございますけれども、外れた原因については、この作業は通常これまでもやっている作業なのですけれども、これまでよりも経験がなかったようなガスの排出があって、これによってホースが外れて飛散に至ったということでございます。
東京電力では、これを受けました対策といたしまして、こういったホースが外れないようにする。それから、汚染させないための装備の徹底ですとか、確認を図るということでございますけれども、原子力規制庁といたしましては、今後、保安検査等におきましてこの対策、状況について確認していきたいと思っております。
また、現時点において、この汚染に伴います被ばく線量の評価結果がまだ提出されておりませんので、実効線量、それから、皮膚の等価線量、こういったものについて速やかな報告を求めているところでございます。
御報告は以上でございます。
○山中委員長
質問、コメントはございますか。
○伴委員
ALPSに入る手前のところでセシウムは大半が取り除かれているので、要は、洗浄の対象となった配管の中に残っていたのはストロンチウムリッチな線源ですよね。それの廃液ということなので、ベータ線による被ばくが重要になるのですけれども、今、最後にお話しされたように、まだ汚染そのものの被ばく、特に皮膚の被ばく線量がどれぐらいになったのかというのはきちんと評価がなされていないということですよね。
取り切れなかった残存しているもののレベルはそれほど高くないようですけれども、ただ、実際にかぶってから除染するまでの間に一体どれだけの濃度のものがどれだけ付着していて、そこからどれだけの線量を受けたのかというのはまだちょっとよく分からないという。全然、それについては、報告がないわけですよね。だから、そういう状況なので、それがどれぐらいになるのかというのはしっかり見極めたいと思います。
それと、これが作業管理の失敗であることは明らかなのですけれども、それでも今回初めてやった作業ではなくて、ずっとこれまでもやってきているのに、今回、こういうことが起きたというのは、やはり何か原因があるはずなので、そこについては、今後、保安検査の中でしっかり詰めていただきたいと思います。
○澁谷原子力規制部東京電力福島第一原子力発電所事故対策室企画調査官
1F室、澁谷でございます。
本件は身体汚染に係る事象でございますので、原子力規制庁としても実施計画の遵守状況の検査、いわゆる保安検査でしっかりと確認してまいりたいと思います。検査の状況につきましては、次回の特定原子力施設監視・評価検討会などを通じて適宜公表していきたいと考えてございます。
また、原子力規制委員会に対しては、四半期ごとの保安検査結果報告がございますので、その中で検査の状況、あるいは検査の結果について御報告いたします。
以上でございます。
○山中委員長
伴委員に少し伺いたいのですけれども、こういう溶液状のものを浴びた場合、除染が済むまでの間の被ばく線量、ベータ線について評価するというのは、かなり厄介なことなのでしょうか。
○伴委員
基本的にいろいろな仮定を置いて評価するしかないので、相当難しいと思います。だから、それをいろいろ恐らく東京電力としても、今、工夫しながらやっているのだろうと思いますが、できるだけ早く結果を出してほしいなと思っています。
○山中委員長
そのほかはいかがでしょう。
どうぞ。
○石渡委員
例えば、飛び散った水の量とか、そういうのが最初のニュースでは何か100ccとかいう話だったのが、昨日ぐらいのニュースでは数Lという形になったり、あるいは最初、この汚染状況でどれぐらいの放射線量だったかということで、1,000ppmとか1万とかが出ていたのですけれども、今回の11ページの上の表では、100kcpmということは、これは10万ですよね。
出るたびに数字がだんだん大きくなってくるという感じで、しかもcpm超と書いてありますから、これ以上だということですよね。まだこれは、要するに、実際の被ばく量というものがきちんとまだ確定していないということだと思うのです。
それとあと、そもそもこういう放射線を測る装置は、特にcpmという値でいうと、これは限界があると思うのですよね。デッドタイムとかもありますから、これ以上はもうカウントできないという限界値があると思うのですけれども、それはどれぐらいなのですか。
○澁谷原子力規制部東京電力福島第一原子力発電所事故対策室企画調査官
1F室の澁谷でございます。
限界値については、まだ確認はできてございません。今後、確認してまいりたいと思います。
○石渡委員
そうですか。「100kcpm超」という、この「超」というものの意味が、要するに、これは測定限界を超えているという意味ではないと理解していいのですか。
○澁谷原子力規制部東京電力福島第一原子力発電所事故対策室企画調査官
その点につきましてもまだ確認できてございませんので、今後、確認してまいりたいと思います。
○石渡委員
それは基本的なことですので、きちんと確認をお願いします。
○山中委員長
そのほかはいかがでしょう。
どうぞ。
○杉山委員
作業管理上の実態について、今はもちろん分からないでしょうから、確認をお願いしたいことがありまして、まず、今回の5名の作業員、この作業自体は東京電力としては以前からやっていたということですけれども、この5名がそれぞれ経験者だったのかどうかということと、あと、通しページ11ページの上段の表でそれぞれの人の情報があるのですけれども、上の2段目の人とその下の人とでは装備が違いますよね。上の2名は作業用カバーオール2重、下の人たちはカバーオールは1重だけれども、アノラックをつけている。この違いは元々何か役割分担があってそのようにしたのか。つまり、管理区域に入域するときに既にその装備を身に着けているわけで、後からかぶるためにアノラックを持っていたのかどうかはよく分からないのですけれども、最初から、だから、この人たちは水をかぶる作業、この人たちはかぶらない作業と分かれていたのではないかと思うのですけれども、その辺はどういうことになっていたのか。
あと、これはばしゃっと水がかかったことは、それはそれで問題ですけれども、当然、そういうことが予想される作業だということでアノラックを用意していたわけで、当然、日々の作業の前にツールボックスミーティングとか、危険予知ミーティングとか、要は、本日やる作業はここがポイントで、こういうリスクがある。だから、これに気を付けようというのを毎日やるはずなのですよね。その辺がきちんと意味のあるような、そういった安全確認がきちんと行われていたかどうか。その辺を確認していただきたいと思います。
○澁谷原子力規制部東京電力福島第一原子力発電所事故対策室企画調査官
1F室、澁谷でございます。
今後、保安検査で確認していきたいと思います。
それで、その役割につきましては、11ページの左下の緑色のところで少し簡単に書いてあるところがあるのですけれども、AさんとBさん、ちょっと細かくて見にくいのですけれども、AさんとBさんにつきましては助勢ということで、これは「助ける」「勢い」と書く「助勢」ということで、役割分担としては、主作業者ではなくて補助のような役割というのを、どうも東京電力の方では、作業者としてはそのような役割分担で行っていたと資料では記載されてございます。
いずれにしても、これは東京電力がその日に会見した中でも申してございましたけれども、ここに入る人はアノラックを全員着用するという作業指示になっていたようでございますので、その辺り、どうしてこのような分担にしたのかとか、それが現場の判断であったのかどうであるかということは、今後、保安検査の中で確認していきたいと思います。
○山中委員長
そのほかはいかがでしょう。
どうぞ。
○田中委員
10ページを見て気になったのだけれども、炭酸塩と硝酸が反応したガスが発生するのは当たり前であって、これまでもガスが発生したりすると、ちょっと何か対応していたと思うのだけれども、今回は見ると「勢いよく排出」とかなんとかと。これまでの作業管理というのは、こういうときにはガスが発生するので、それにどう対応しなければいけないということが分かっていて、それを引き継いで作業を本当はしなくてはいけないのだけれども、このときの作業管理の問題とか、何かがあるかと思うので、その辺についても、今後、検査の中で見ていただきたいと思います。
○澁谷原子力規制部東京電力福島第一原子力発電所事故対策室企画調査官
1F室、澁谷です。
承知いたしました。今後、検査で確認してまいります。
○山中委員長
そのほかはいかがでしょう。よろしいですか。
線量の評価とともに、今後、様々な原因究明等、あるいは対応を保安検査の中できちんと確認していただくようお願いいたします。

参照:原子力規制委員会.令和5年度原子力規制委員会(第41回会議議事録).令和5年11月1日

2023年11月1日-委員長定例会見

原子力規制委員会の記者会見によると、以下のような見解のようです。

  • (委員長個人としては)事業者の運転管理(プロジェクト管理)が不十分だった(定めどおりに作業員が全員アノラックを装着していなかった)という認識
  • ほかのプロジェクトを含めて、プロジェクト管理の観点から注視していく
  • 指示系統に係る労働法令関係の違反については炉規法の話とは別だが、保安検査で確認し監視検討会(特定原子力施設監視・評価検討会)で議論を進める必要がある
  • 情報把握や情報発信(汚染廃液の飛散量などがあとで訂正されたことなど)については、大きく問題視していない
  • 洗浄設備を常設or仮設であるべきなのかは、監視検討会(特定原子力施設監視・評価検討会)のなかで議論する
  • この問題が柏崎刈羽原発の適格性に影響するとは考えていない

 

以下は、少し長いですが会見録の抜粋です。下線は本記事で追記したものです。

○記者 読売新聞社のハットリです。よろしくお願いします。今日最後のほうで報告があった、福島第一原発の作業員の身体汚染なのですけども、今日の委員会では、委員の中には作業管理の失敗というような厳しめのコメントもあったのですけども、東京電力の作業の管理に関して委員長はどのように見ていますでしょうか。
○山中委員長 ALPS処理施設の配管の洗浄、これに際して作業員の身体汚染が生じたということについては、私自身東京電力の実施計画違反であるというふうに認識しております。これからの報告は待たないといけないところかと思いますけれども、委員からもコメント出ましたように、やはり協力会社の作業員、あるいは下請会社の作業員の作業中に生じたことであったとしても、東京電力自身の実施計画をきっちりと守るというこの運転管理の在り様というのが、不十分だったのではないかというふうに私自身は考えています。
○記者 東京電力の発表内容もちょっと訂正が入ったりして、浴びた水の量が変わったりとかしているのですけども、そういった情報公開の姿勢についてはどのようにお考えでしょうか。
○山中委員長 情報の把握の難しさというのは確かにあろうかと思いますし、情報公開の迅速さ、あるいは正確さということについては、問題があったところもあろうかと思いますけれども、この点については、今後も透明性高く情報発信をしていただきたい。我々規制当局としては保安検査の中で、事故原因等の究明、あるいはこれから同じようなことが起こらないような検査の体制を組んでいきたいというふうに思っております。
○記者 あと最後なのですけども、これからまたもっと事案について詳しく把握する必要があると思うのですけども、最初はやっぱり線量がどれぐらいかというところが、大事な重要になるのでしょうか。
○山中委員長 やはり作業員の健康の問題というのは非常に重要でございますので、実効線量の評価というのは、重要なポイントの一つかなというふうに思っております。
○記者 現時点で線量以外でこういったような情報を必ず出してほしいというような項目ありますでしょうか、
○山中委員長 やはり運転管理の在り様というのを細かい情報というのは、検査の中できちっと見ていくつもりにはしておりますので、現場での東京電力と検査官との対話というのを密にしていただきたいというふうに思っています。
○記者 ありがとうございました。

○記者 フリーランス、マサノです。よろしくお願いします。今の点なのですけれども、山中委員長としては実施計画違反であると考えているとおっしゃったと思うのですけれども、この作業員は 1 万 cpm の測定の針が振り切れる被ばくをされたということなのですが、この実施計画を読みますと、その増設 ALPS(多核種除去設備)の前処理設備のところには、「炭酸塩沈殿処理による生成物はクロスフローフィルタまたは沈殿槽により濃縮し、高性能容器に排出する。」としか書かれていないのです。山中委員長がおっしゃった違反であるというのは、この炭酸塩にその有毒物質である硝酸を混ぜるアナログな洗浄について何も記載されていないということが違反と考えていらっしゃるのか、労働環境のことなのか、どちらでしょうか。
○山中委員長 こういうような溶液系を扱う施設では、必ずタイベックスの上に、水溶液を浴びたときの防護性のあるアノラックを着るというのが定められているようでございます。ということで、5名のいわゆる作業員が全員アノラックを装着していなかったということが違反ではないかという、実施計画違反ではないかという私の個人的な認識でございます。これから、きちっと検査の中でその辺りは確かめていきたいというふうに思っております。
○記者 なるほど。引き続きその件なのですけれども、硝酸を注入する施設も仮設で、洗浄廃液を扱うホースも仮設、受け入れるタンクも仮設ということで、年1回3系統で3回、このような作業を行うようなのですけれども、こういった危険を伴う作業、これはこのフェイルセーフの設計が必要ではないかと考えます。それが仮設のまま、年3回行われているということについて、どのようにお考えでしょうか。
○山中委員長 これは常設で洗浄するような設備を造ったほうがいいのか、あるいは仮設で対応したほうがいいのかというのは、これは本当に安全上、どちらが好ましいのかというところは判断をしないといけないところかと思います。この辺りも含めて、監視検討会(特定原子力施設監視・評価検討会)の中でも議論をしていきたいというふうに思っています。
○記者 実はその当初5人の方を、A、B、C、D、Eさんと言われて、CさんがAさんにかっぱを着せなかったことが原因であるということ、それからホースの固縛位置がタンクから遠過ぎたということが原因だとされていまして、なので、かっぱを着せること、そして固縛位置をもっと近づけるという計画を立てて、それを確認するということが対策だというふうに、今、現在は東電は原因と対策について発表しています。しかし今委員長おっしゃったように、こういったアナログな洗浄作業が仮設施設で行われているということも一つの原因ではないでしょうか。
○山中委員長 様々な要因があるということは私も認識をしておりますし、どういう設備がこういう作業で、妥当なのかどうかということについては今後も検討していきたいというふうに思います。
○記者 もう一つ関連なのですけれども、先ほどどなたかも質問されてたように、当初は元請からの一次請けとしていたのが、事故から5日もたった後で、実は三次受け、3社でしたと訂正がありました。このような指示系統が労働安全の労働法令に違反するということを指摘されると、作業員Cが作業員Aに一時的に交代した際、作業員Aがアノラックを着用せずに作業したという表現を訂正しますと、これも訂正されました。今日の資料を見ますと、また別の表現に変わっていまして、作業員Cが作業員Aと一時 的に交代した際、作業員Aがアノラックを着用せずに作業した後、Aさんの責任であるということになっていますが、Aさんが主語になっていますけれども、もともとそのCさんとAさんには指示系統関係はなかったので、それが正されましたけれども、こうした労働法令に違反があるかどうか、こういったことを監視検討会のほう検討はされますでしょうか。
○山中委員長 もちろん、いわゆる保安検査の中で運転管理というのは非常に重要なポイントですので、御指摘のような点、きちっと保安検査の中で確認をした上で議論は監視検討会の中でしていきたいというふうに思っています。
○記者 一旦終わります。

○記者 朝日新聞のフクチです。福島第一原発の作業員の方の身体汚染の話なのですけども、先ほどお話がありました実施計画違反であるというふうに認識されてるって話ですけれども、東京電力の会見の話ですと、役割が5人の方それぞれ違っていて、監視役であるならば、それは受注されている企業の方々の現場判断というのもあり得るという、そういった留保が一部あったのですけど、委員長の御認識としては、役割が監視役であろうと実作業に当たる人間であろうと、あの場にいる作業員の方であれば、アノラック、いわゆる雨がっぱを着るべきだったという認識ですか。
○山中委員長 そういう認識です。東京電力がやはり運転管理をきちっとすべき、その辺りは東京電力は現場にはもちろんいなかったにしても、きちっとその辺りは教育訓練もしないといけませんし、運転管理をする責任は東京電力にあるというふうに思っています。
○記者 ありがとうございます。先ほどの話のところで確認で恐縮なのですけども、実施計画の中で定められている服装といいますか、今回だとアノラックを着るというところの定めというのは、委員長の今の御理解でちょっと教えていただくと、どういうふうな記載があって、それに違反されたという。
○山中委員長 これは現場の検査担当している職員からの情報でございますけれども、そういう水溶液を扱うような施設ではタイベックスの上にアノラックを着るという、そういうルールになっているという、そういう報告を受けておりますので、そういう実施計画に基づけば、やはり全員そういう作業に当たるわけですから、そういう服装をするべきだったというふうに思っております。
○記者 ありがとうございます。あと、先ほどの質問の中でも出ていた、労働法令関係の違反についても今後確認をされるのかという話で、もちろんとおっしゃっていたんですけども、それは私も不勉強で恐縮ですけど、労働安全衛生法であるとか、そういった法律の話も公開の会合で議論されるんでしょうか。
○山中委員長 我々はやはり発電所の中での、いわゆる東京電力福島第一原子力発電所の中での安全に関する監視検討をするという場でのあの議論でございますので、炉規法の話とは別に、我々は議論を進める必要があるかというふうに思っています。
○記者 具体的にどういう法令に沿って見ていくとかというのは、今お話できますか。
○山中委員長 恐らく炉規法の範疇にはない、我々が扱うべきその原子炉等規制法の中で1F(福島第一原子力発電所)に適用をしなければならない、そういう法律の中できちっと議論をしていくことになろうかというふうに思っています。
○記者 それは今回だと三次請けの作業員さんだったわけですけれども、そういった契約と、あと現場での作業形態の不一致とか、そういった部分を見ていくということなのでしょうか。
○山中委員長 当然、保安検査の中で今回の案件で言いますと、運転管理ですとかプロジェクト管理に関係するところをきちっと見ていくということになろうかと思いますし、現場でもそういうところは注意して監視をしていくことになろうかというふうに思っています。
○記者 分かりました。あと委員長の御自身の今の認識では、実施計画違反に当たるのであろうという話ありましたけども、実際に違反であるか否かというのは、これは第3四半期の間でのことでしたので、それがいずれ定例会の場で恐らく年明け頃に上がってきて、そこでどういう判断になるかってそれを委員会で議論して決定になるということですか。
○山中委員長 恐らくそれまでに1F監視検討会の中で報告があるというふうに今日話が出ておりましたので、そういう場でも議論をすることになろうかと思いますし、実際に作業員の方の実効線量の評価等についても、その場でまずは報告があって、最終的にはそういう検査の四半期報告の中で委員会には上がってくることになろうかというふうに思っています。
○記者 ありがとうございます。ちょっと話を広げるとですね、今、柏崎刈羽の追加検査の関係の議論で出てきた適格性の再確認の一つにはですね、福島第一の廃炉をやり遂げるという項目もありまして、こういった身体汚染のような事案が出て、なおかつ実施計画違反だという話になってくると、適格性の再確認の1項目、1項目といいますか、福島の廃炉という面では適格性大丈夫なのかという考えを持つんですが、その点への広がりというのは今どう考えていますか。
○山中委員長 今回の事案というのは、注目すべき事案であるというふうに思っておりますけれども、廃炉全体に対するその影響が著しくあるかということを考えますと、全体の管理をきちっとしていただければ、廃炉全体に対する影響というのは、そんなに大きなものではないかというふうには思っています。したがいまして、今回の事案、注目すべき事案ではありますし、改善すべき点は多々ありますけれども、全体の廃炉は着実に進めていっていただきたいというふうに思っています。
○記者 分かりました。そうすると、実施計画の違反か否かの議論とは別個で、また適格性の再確認の確認というのは、それぞれ別で進められるということでしょうか。
○山中委員長 私は東京電力の柏崎刈羽の関連でいう適格性について、本件が何か影響するとは考えていません。
○記者 分かりました。ありがとうございます。

○記者 TBSテレビのタケモトと申します。引き続き福島の件で恐縮なのですけれども、先ほど委員長の発言にもあったとおり、今回、東電の社員がこの現場に立ち会っていなかったということで、この件についてどのように考えているかということについてお伺いできますでしょうか。
○山中委員長 全ての作業について東京電力の社員が立ち会わなければならないとは考えておりませんけれども、やはり様々な作業が1Fのサイトでは行われますので、教育訓練等をきちっとしていただく責任は東京電力にもあるかと思いますし、当然その作業の前の様々なミーティングには東京電力の社員が参加して注意事項等確認するという、そういうことはしていただきたいというふうに思っています。
○記者 ありがとうございます。もう一点、こちらの件に関して作業員の被ばく線量がまだ明らかになっていないということで、今後例えば、今日の委員会の中ではなかなか難しいという話も上がっていま したけど、これについて期待することなどあれば。
○山中委員長 これ、御専門の伴委員にも確認を今日させていただきましたけども、なかなか現場での除染までの被ばく量の評価、あるいは硝酸溶液を使っておりますので、身体に滞留した放射性物質の除去の具合、これを経過を見ながら最終的に実効線量の評価、あるいは局部的なその線量評価をしていくことになろうかというふうに思っています。
○記者 ありがとうございます。最後に、総括として、今回の東電の対応、不十分だったという御発言もありましたけど、まとめてどういった点が不十分だったかということについて、もう一度お話を伺えますでしょうか。
○山中委員長 やはり、全体のこの作業の中での運転管理、この点については東京電力に手落ちがあったんではないかなというふうに思っております。あくまでも個人的な見解ですけれども、実施計画に違反があったんではないかという見解を持っています。

○記者 共同通信のタシマです。よろしくお願いします。私も1Fの作業員の身体汚染のことについてお伺いしたいんですけれども、いろいろ本日の定例会合でも規制庁のほうにも指示を出されていましたけれども、東電側に望む対応としてはどのような対応を望まれますか。
○山中委員長 当然、ALPS施設での作業というのは必要になってまいりますし、このような、いわゆる配管の洗浄作業というのはいろんなところで同様の作業がされると思いますので、きちっとやはり運転管理をしていただく、実施計画に沿った管理をしていただくということがもう基本だと思います。それぞれの福島のサイトではいくつかのプロジェクト動いていると思いますけれども、プロジェクト管理についても東京電力には責任を持って遂行していただきたいというふうに思っています。
○記者 今回、ALPS関連の配管の作業でしたけれども、今のお言葉を聞くと、何かほかの、ALPS関連以外に限らず、その作業の管理の仕方がきちっとしているかということも検査で見ていくということなのでしょうか。
○山中委員長 当然これ2週間ほど前に、現場に私行っております。検査官との意見交換の中で、検査官はやはりプロジェクトの管理ということをきちっと見ていきたいという意見を持っておられる方が多かったので、この点については私も同様な意見でございます。ほかのプロジェクトがどういうところが不具合があるかというのは、現時点ではまだ報告は上がってきておりませんけれども、そういうところは注視していきたいなというふうに思っています。
○記者 ありがとうございます。

○記者 すみません、最後です。ALPS処理の関係なのですけれども、処理水を安全ですと言って基準以下ですと言って海洋放出をしている衆人環視の真っ最中に、実はそのALPSの中が危険だった。そのよう な場所で、作業員が被ばくしてしまったということについてどうお考えかというのを、すみません、改めてお考えをお願いします。
○山中委員長 あのような施設でございますので、そういうトラブルというのはいろんな形で起きてくるというふうに可能性としてはあるというふうに思っています。そういうトラブルをできる限り少なくしていくということが東京電力には求められますし、我々としては監視・指導していく必要があるかというふうに思っております。ALPS処理水の海洋放出そのものに対して、今回の事案がものすごく大きな影響があるというふうには私自身は思っておりません。
○記者 最後と言いながらこれが最後なのですが、やはり柏崎刈羽との関係を考えるときに、汚染水に絡んで被ばくをさせてしまったのはこれで2回目で、同じかっぱ着ていなかったという同じ事案なのですね、2回目なのですね。これは2回あることは3回あるといいますか、また起きるんじゃないかと思うのですけれども、やはり柏崎刈羽を運転する資格がないと言われてもしようがないと思うのですが、いかがでしょうか。
○山中委員長 今回の事案もそうですけれども、東京電力福島第一原子力発電所で起きる様々な事案が直接東京電力柏崎刈羽原子力発電所の適格性の判断に直接影響を及ぼす問題では今回の件についてはないというふうに私自身は考えています。

参照:原子力規制委員会.原子力規制委員会委員長定例会見.令和5年11月01日

2023年11月8日-委員長定例会見

原子力規制委員会の記者会見によると、以下のような見解のようです。

  • (委員長個人としては)原子力規制委員会が認めた実施計画自体に問題はなかったが事業者が実施計画に従わなかった(定めどおりに作業員がアノラックを装着していなかったことなど)品質マネジメント上の違反という認識
  • 保安検査で確認し監視検討会(特定原子力施設監視・評価検討会)と原子力規制委員会で報告が必要
  • 保安検査では現場の協力会社の職員からの聞き取りも行う
  • 偽装請負の問題に係る企業名の公表などは原子力規制委員会として個別に判断する

 

以下は、少し長いですが会見録の抜粋です。下線は本記事で追記したものです。

○記者 話題が変わりましてすみません。先週のことなんですけれども、1日の定例記者会見で東京電力の協力会社の作業員が被ばくした件で、委員長は実施計画違反ではないかとおっしゃられまして、実際に炉規法で災害防止をするために実施計画があるということなので、その目的が達成されなかったという意味では違反だと思うんですが、それは単に東電の違反なのか、それとも委員会が認可した実施計画自体が甘かったのか、両方だったのか、これについてはどのようにお考えでしょうか。
○山中委員長 私は東京電力の実施計画違反であるというふうな認識でおります。
○記者 ありがとうございます。かなり重要な重い発言だったと思うんですが、これをなぜ委員会の場で言わなかったのでしょうか。会見だけで述べただけだとリップサービスじゃないかというような声を聞いたのですがいかがでしょうか。
○山中委員長 少しリップサービスというのがどういう意味かというのは理解をしかねますけれども私の個人的な意見として、今回の事案というのは東京電力の実施計画違反であると。特に今明確になっている部分については、東京電力が決めた業務マニュアルに従っていないという、アノラックを着てそういう溶液を扱うような場合には作業するという、そういう計画違反であるという認識ではおります。これは個人的な見解として、先週申し上げたところでございますし、今後、先週も申し上げましたけれども、保安検査の中で具体的にその違反の程度等については現場から報告がございますし、その結果に基づいて委員会できちっと意見の程度については議論していきたいというふうに思っています。
○記者 念のためなんですが、1日の原子力規制委員会自体では、事故対処室の澁谷企画調整官が、実施計画の遵守状況を検査しますということと、監視評価検討委員会で適宜公表し、委員会に対しては四半期ごとの保安検査結果報告をすると、わりと軽い受け止めで、委員長の御発言とちょっと乖離があったかなと思うんですが、その後この取扱いについて調整などはされましたでしょうか。
○山中委員長 特に調整はしておりませんけれども、少なくとも前回の会見でお話をさせていただいたのは個人的な意見として、これはもう実施計画違反であろうという認識を示させていただきました。そういう観点からは、やはり保安検査の中で見られた影響の程度については、きちっと監視・検討会(特定原子力施設監視・評価検討会)等で報告をいただいた上で、委員会でも報告をいただくべきかなというふうに思っております。その点については指示をしたところです。
○記者 ありがとうございます。長くなってすみません。ちょっとあと2問だけ、この件に関して。作業員に降りかかった洗浄廃液が100ミリが数ミリに変わりましたが、元プラントエンジニアに聞くと、硝酸液の量と圧力と配管の長さと配管の直径、それからブースターポンプを止めろという指示から実際に止まった時間が分かれば、簡単に検査ができるんだと。また、そういった量を基にそのプラントというのは設計するべきなんだと。もしそういう計算ができていない、設計ができていないとすると、それ自体がおかしいという話だったんですが、炉規法で定めている実施計画について、災害防止が目的だという観点から東電それから三次受けの企業3社から直接どういう防止対策ができていたんだという聞き取りをすべきだと思うのですがいかがでしょうか。
○山中委員長 当然これは品質マネジメント上、そういう災害が起きないような設備、あるいは手順で作業が行われるべきであろうというふうに思っておりますし、報告現在のところを受けてる限りにおいては、事前にミーティングも東京電力とその下請け企業との間、職員の間でミーティングもしているということなので、これはやはり手順をきちっと遵守されてなかったということが大きな原因になろうかなというふうに思いますし、御指摘があったように、これ仮設の施設ですので、なかなか設計どおりにいかないところはあろうかと思いますけれども、そういうホースの指示ですとか、あるいはポンプの圧力の制御ですとかそういうところはきちっと手順に定めて、事故のないようにしていただく必要があろうかなというふうに思っています。
○記者 すみません、最後です。10月5日の監視・評価検討会で、まさにこのALPS(多核種除去設備)内のスラリーから出てくる後、炭素塩の話が出てきていたのですが、その中にこの仮設施設について表記がないので、知りたいのは原子力規制委員会及び規制庁は、これが仮設で行われていたということ自体は御存じだったのかどうか、いかがでしょうか。
○山中委員長 年に3回程度、これ私、報告なので、正確な数値については職員に確かめていただきたいんですけども、3回程度そういう処理を行われていたということは聞いております。仮設でそういう処理を行っていたと。

○記者 分かりました。あと話は変わって、福島第一の作業員の方の身体汚染なんですけれども、先ほどもお話がありましたけれども、現場でのミーティングがありながら、現場で作業員さん、アノラックを着ていなかったとか、あとは、これは東京電力の会見で出た話ですと、ホースの固縛、止める位置というのが先端から離れていた分、ガスが出たときに大きく暴れて抜けてしまったと。安全対策の不備という面で見ると、一つの理由ではなくて複数やはり要因があって起きたものだという印象を持っているんですけども、そういった面で考えていくと、東京電力の改めてですが、マネジメントといいますか、管理の部分での不備は明らかだと思うんですが、委員長としては今、東京電力のマネジメント力に関してはどういうふうに受け止めていますでしょうか。
○山中委員長 実施計画違反である可能性があるというのは、先週、私の個人的な意見としてお話をさせていただきました。特にどういう点でという観点で言いますと、御指摘いただいたとおり、品質マネジメント上の問題というのは明らかだと。社内規定のアノラックを着て、全員がそういう作業に当たるという点もそうですし、仮設のホース等の固定のしぐあいというのも、きちっとミーティングの中で確認すべきだったというところだと思います。加えて今、確認中でございますけれども、作業員の放射線に対する防護については、この程度の度合いについては今評価中ということでございますので、両面について、保安検査の結果を待ちたいというふうに思っております。違反の影響の程度、これをきちっとやはり判断するためには、その両面を見ていく必要あろうかなというふうに思っています。
○記者 ありがとうございます。あと、またこれはいずれ監視・評価検討会でも議論されると思うんですけども、そういったマネジメント力を上げていくという意味では、東京電力の当時の対応をどういうものをチェックされて、今後求めるとすれば、どういうところは掘り下げていきたいというふうに考えてらっしゃいますか。
○山中委員長 これは先週も少しお話をいたしましたけども、現場の検査官との意見交換の中で、やはりプロジェクト管理、運転管理というのが、福島第一原子力発電所の廃炉作業の中では非常に重要だと。その点については、現場の検査官と私の意見というのは非常に一致するところでございますので、その点については十分、これからの検査の中で見ていってほしいと思っていますし、私自身もできる限り、時間の許す限り、現場に行ければ、そういうところを見たいなというふうに思っています。
○記者 ありがとうございます。今回の作業ですと、本来現場にいるべき班長の方がいなかったという、報道でも既に出ている内容ですけれども、取材すると、廃炉の現場を見ていらっしゃる方々から聞くと、東京電力がもっと現場に出る必要があるんじゃないかという意見も聞いたりするんですけれども、当然、複数の様々な作業がある中で、全部東京電力の社員さんが行くのも現実的ではないと思うんですが、東京電力が実際に現場で確認するという意味では、もう少し工夫の余地があるのか、その点はどう考えていますか。
○山中委員長 東京電力との意見交換もできるだけ、私が出向いたときには行うようにしております。必ず言うのは、やはり現場力を上げてくださいと、現場に出てくださいと。東京電力の社員が現場に出て、きちっと現場が分かった上で作業を進めてくださいねというのはお願いしているところで、御指摘のとおり、やはりそういう現場力の向上というのは必要かなというふうに思っております。
○記者 ありがとうございました。

○記者 再びすみません、フリーランス、マサノです。先ほどの件で、仮設で行っていたということを委員長としては聞いていたということに関してなんですけれども、東電に責任があることは当然なんですが、その下の下の下の三次請けの企業が、きちんとした労働環境、安全な労働環境を、ハード面も、カッパを着るというソフト面もできていない、できない、能力のない三次請けが仕事を請けてしまうということについて、先ほども聞いたんですが、もう一度、三次請けの企業か直接ヒアリングをするということも重要だと思うのですが、どうでしょうか。
○山中委員長 当然、保安検査の中で現場の職員、いわゆる下請けないし協力会社の職員からの聞き取りということもされると思います。私自身は、やはり東京電力のマネジメント上の問題であるというふうに思っておりますし、現場の協力企業の職員については、きちっとどういう作業をすべきなのか、あるいはどういう作業なのかということを教育訓練するというのは東京電力に責任があるというふうに思っておりますので、現場からの聞き取りというのは、当然保安検査の中で、我々もそういうふうに思っております。
○記者 保安検査の中身って、なかなか一般の人の目には触れないところがあって、特に元請の企業名は公表されていますけれども、二次請けも三次請けも一次請けもですけれども、全く公表されていない。その中で偽装請負じゃないかという疑いも出てきているので、企業名が公表されるということが大変重要になってきているんですけれども、その点いかがお考えでしょうか。
○山中委員長 まずは、私自身の考えは、やはり東京電力がきちっとマネジメントすべきであると。一方、どういう企業がそれぞれの作業を請け負ったかということも当然情報としては上がってくる必要がございますけれども、それについて、どこまで公表すべきなのかということについては、よく判断をして、規制委員会としては公表すべきところは公表しますし、上げるべきところではないところは上げないという、そういう判断は毎回しているつもりでございます。
○記者 最後にすみません、1点、福島の東電の小野明プレジデントが、この事件を最初に聞いたときに、カッパを着ているはずだから、そんなに汚染がないはずだみたいな印象を第一印象として持ったと会見の中でおっしゃっていたんですが、そういう旨をおっしゃっていたんですけれども、そういうのんきなことをおっしゃったということも、やはりカッパを着るというシンプルな指示すら出したつもりで届いてないという意味では、これはどういうことだとお考えでしょうか。
○山中委員長 繰り返しになりますけど、これはもうマネジメント上、品質マネジメント上の東京電力の問題だというふうに思ってます。
○記者 ありがとうございました。

参照:原子力規制委員会.原子力規制委員会委員長定例会見.令和5年11月08日

ALPS汚染廃液の飛散による作業員の被ばくのこれからの動きは?

2023年10月25日まで

東京電力によると、2人は入院を継続するようです。

発電所構内で除染が完了しなかった協力企業作業員2名について、その後の状況をお知らせします。
昨日(10月25日)午後10時25分に福島県立医科大学附属病院に到着し、医師の受診と除染を開始しました。
その後、医師の判断により除染の継続ならびに経過観察のため入院しました。
なお、汚染部位の皮膚への外傷は確認されていません。

参照:東京電力ホールディングス.福島第一原子力発電所 協力企業作業員における放射性物質の付着について(続報).2023年10月26日

2023年10月26日から

2023年11月1日付のNHKのニュースによると、原子力規制委員会は今後、東京電力の管理体制を確認するとのことです。

原子力規制庁は、福島第一原発で実施している検査の中で、東京電力の管理体制などに問題がなかったか確認することにしています。

参照:福島第一原発 作業員に廃液で規制委 管理の問題など指摘相次ぐ―NHK

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ALPS汚染廃液の飛散による作業員の被ばくの評判・口コミは実際どう?感想・レビューについてまとめ

ここではこの問題についての評判・口コミをみていきましょう。

評判・口コミを調査したところ、汚染水処理や作業員の被ばく、かっぱ未着用、仮設タンク、飛散量の訂正、管理体制などに対する不安や心配があることがわかりました。