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【第3条と第38条】地震応答解析の実施|川内原発1,2号機

原発の設置許可基準規則の設計基準対象施設の地盤(3条)と重大事故等対処施設の地盤(38条)のうち「地震応答解析」の実施について、九州電力の川内原発1、2号機の場合を紹介します。

川内原発1、2号機の「地震応答解析」の実施の概要について知りたい方は、参考にしてみてください。

設置許可基準規則の要求を確認!

原発では、設置許可基準規則や規則の解釈、審査ガイドなどにしたがい、条文を構成する項ごとに以下の取り組みを行い安全を確認しており、「地震応答解析」の実施は下線で示している取り組みです。

設計基準事故の規則要求 重大事故の規則要求 取り組み① 取り組み②
設置許可基準規則
第3条第1項
設置許可基準規則
第38条第1項
「評価対象」の選定
「地震応答解析」の実施
「基礎地盤のすべり」の評価
「基礎の支持力」の評価
「基礎底面の傾斜」の評価
設置許可基準規則
第3条第2項
設置許可基準規則
第38条第2項
「周辺地盤の変化による液状化など」の評価
「地殻変動による基礎地盤の傾斜など」の評価
設置許可基準規則
第3条第3項
設置許可基準規則
第38条第3項
「活断層」の評価

 

 

「地震応答解析」の実施を簡単にご紹介!

川内原発1、2号機の「地震応答解析」の実施では、地盤を対象に地震の揺れを考えた解析を行うために、基準地震動から算出される入力地震動、地盤や地層の素材(砂、石など)の重さや強さなど(解析用物性値)、モデルで再現している範囲と再現できない範囲の境界での条件(境界条件)を設定したうえで、地層の幅や高さ、地盤のうえに建てられている建物を再現してコンピュータモデル(解析用要素分割図)を作成します。

この作成したコンピュータモデルを使って、地震の揺れにより地盤に加えられる力や地盤の動きの程度を計算する「地震応答解析」を行っています。

なお「地震応答解析」は、選定された「評価対象」となる断面ごとにそれぞれ行っています。

それでは川内原発1、2号機の「地震応答解析」の実施に必要な「基準地震動」「入力地震動」「解析用物性値」「境界条件」「解析用要素分割図」について、順番にみていきましょう。

基準地震動:原発で想定する大きい地震を設定

原発では、「基準地震動」と呼ばれる大きい地震を原発の丈夫で広い岩盤(解放基盤表面)で起こることを想定しても、その岩盤の上の建物や施設、設備に問題がないように設計する必要があります。

以下は川内原発1、2号機で想定する「基準地震動」ですが、「基準地震動」はひとつではなくいくつかあることから、「基準地震動」ごとにいくつかの「地震応答解析」を実施する必要があります。

なお「基準地震動」は、設置許可基準規則の4条および39条で想定することが求められている地震のことをいいます。

入力地震動:「基準地震動」をそのまま設定できない場合に必要

原発では、地震の揺れにより地盤に加えられる力や地盤の動きの程度を計算する「地震応答解析」を行うために、原発の建物や施設、設備の下の地盤や地層を再現したコンピュータモデルを使っており、コンピュータモデルは解析をきちんとできるようにある程度の大きさが必要です。

コンピュータモデルへの地震動の入力はモデルの一番下で設定する必要がある一方、「基準地震動」は解放基盤表面での地震であることから、解放基盤表面の高さとコンピュータモデルの一番下の高さによっては、「基準地震動」をそのまま入力として設定できない場合があります。

このような場合に、別途「基準地震動」から「入力地震動」をあらかじめ計算しておき、「入力地震動」をコンピュータモデルへの入力として準備しておく必要があります。

以下は川内原発1、2号機のコンピュータモデルの考え方ですが、「入力地震動」あらかじめ計算してから「地震応答解析」を行っています。

解析用物性値:地盤や地層の素材ごとに設定が必要

原発では、原発の建物や施設、設備の下の地盤や地層の素材(砂、石など)の重さや強さなどを考慮し、「基準地震動」と呼ばれる大きい地震を想定しても、その岩盤の上の建物や施設、設備に問題がないように設計する必要があります。

以下は川内原発1、2号機で想定する地盤や地層の素材(砂、石など)の重さや強さなどの根拠ですが、試験結果などをもとに設定することにしています。

境界条件:限られた範囲の解析では設定が必要

原発では、地震の揺れにより地盤に加えられる力や地盤の動きの程度を計算する「地震応答解析」を行うために、原発の建物や施設、設備の下の地盤や地層を再現したコンピュータモデルを使っており、このコンピュータモデルは実際には大きく広がる地盤や地層の一部を切り出して、ある程度の大きさにモデル化しているため、コンピュータモデルで再現している範囲と再現できない範囲の境界が生まれ、この境界で実際とコンピュータモデルが異なることから、解析が正確にできないおそれがあります。

このような場合でも解析が正確に行えるようするために、コンピュータモデルで再現している範囲と再現できない範囲の境界で「境界条件」と呼ばれる条件を設定することにしています。

以下は川内原発1、2号機の「境界条件」ですが、地中の建物などで反射した地震波が大きく広がる地盤や地層を伝わっていき戻って来ないような状況を再現するために、境界で地震波が吸収できるよう配慮することができるエネルギー伝達境界や粘性境界を設定しています。

解析用要素分割図:地質断面図などの調査結果から作成

原発では、地震の揺れにより地盤に加えられる力や地盤の動きの程度を計算する「地震応答解析」を行うために、地盤や地層、原発の建物や施設を再現できるよう、地盤や地層の幅や高さ、地盤のうえに建てられている建物を考慮できる「解析用要素分割図」を作成することにしています。

以下は川内原発1、2号機で作成した地質断面図と「解析用要素分割図」ですが、ボーリング調査などをもとに作成しています。

 

 

 

本記事は原発の新規制基準施行後の最初の設置許可の情報やヒアリング資料を主に参考にしており、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

また、当サイトに掲載している情報は、万全の保証をいたしかねます。原発の詳細な情報は、必ず各電力会社または原子力規制委員会の公式サイトでご確認ください。