くらべて原子力

原子力施設の基本設計をくらべるブログです。

原発の「改良標準化」とは?

原発の「改良標準化」について紹介します。

原発の「改良標準化」について知りたい方は、参考にしてみてください。

原発の「改良標準化」について解説!

1970年に商業用の水を使った原発(BWR:敦賀1号機、PWR:美浜発電所1号機)が日本で初めて運転を開始したのを皮切りに、その後つぎつぎと他の原発(BWR:福島第一原子力発電所、東海第二発電所、PWR:高浜発電所1号機、大飯発電所1号機)も運転を開始しました。

参照:火力原子力発電技術協会.火力原子力発電.1990-02

しかし、当時の原発はまだアメリカから輸入された発展途上の技術だったことから、いくつもの運転トラブルや故障が発生し原発の運転停止や原発の検査などにより満足に発電できない状態が続きました。

原発の信頼性にかかわる特に問題となった大きなトラブルとしては、当時アメリカでも未解決であった以下の2つがありました。

  • 腐食によるステンレス製配管の割れ(応力腐食割れ)(BWR)
  • 蒸気発生器の伝熱管の損傷(減肉腐食)(PWR)

また、原発でトラブルや故障が多発したことから、原発の検査などのために高線量の現場作業を行う機会が増えるとともに、なぜか原発の現場自体の線量も年々高くなる傾向があったことから、いかにして作業員の被ばくを低減するかということも当時の大きな課題の一つでした。

  • 原発の作業員の被ばくの低減

このように、いくつもの大小の問題を解決し原発の信頼性を取り戻すとともに、トラブルを減らし原発をより長く運転できるようにし経済的な電源として成り立たせることのほかに、原発の作業員の被ばくの低減などを検討するために、当時の通商産業省内に「原子力発電機器標準化調査委員会」及び「原子力発電設備改良標準化調査委員会」が設置されました。

学識経験者や電力会社、電機メーカなどの代表から構成された調査委員会は、「第一次改良標準化」や「第二次改良標準化」などのいくつかのステップに分けて原発に関する問題や課題を検討し解決していきました。

参照:内山昌幸.軽水炉技術の変遷.昭和62年2月33日

ここでは、調査委員会にて検討が進められた「第一次改良標準化」と「第二次改良標準化」の以下の3点の問題や課題についてご紹介いたします。

腐食によるステンレス製配管の割れ(応力腐食割れ)(BWR)

BWRにおいては、高線量の原子炉圧力容器に水を送り込み蒸気を作り出し、この蒸気をボイラーまで導き発電をするため、放射線分解により発生してしまう物質がボイラーに悪さをしないよう配慮する必要があることから、火力発電のように腐食防止の薬品を入れることができず、原子炉圧力容器の中には基本的に純水だけを送り込むことにしています。

原発の配管はさびにくいステンレス製ですし、水の管理もしっかりと行っていたことから、原発において配管が腐食して割れるなどということは当時考えられませんでしたが、1974 年 9 月から実施された福島第一原発 1 号機の定期点検において、ステンレス製配管の溶接部にひび割れが発見されました(下図参照)。

電力会社や電機メーカなどが調べてみると、①ステンレスに熱が加わり変質してしまうこと(下図参照)、②力がかかる箇所であること、③純水のなかにある程度酸素が含まれていることといった3つの条件がそろってしまうと、いくら丈夫なステンレスでも割れてしまうといった、専門用語で「応力腐食割れ」という現象が原因であることがわかりました。

原発の建設時には、ステンレス配管の端と端を溶接によりつなげる際に熱を加えますし、熱を加えるとステンレス製配管はわずかに伸び縮みしますが、つなげた別の配管により動きが制限されることから、動きに制限がある分だけ配管が動こうとする力が残ってしまうことが多くありますし、原子炉圧力容器の中で水の放射線分解により発生する酸素が純水に含まれることから、これら3つの条件がそろってしまいステンレスが割れてしまうということにつながったことが考えられました。

この対策として、よりステンレスに負担をかけない方法で溶接した配管へ交換すること、すでに溶接した配管については加熱や冷却を追加で行うことにより溶接部かかる力を除去すること、「応力腐食割れ」に強い特別なステンレス製配管へ交換することなどにより、「応力腐食割れ」を防止することで原発をより長く運転できるようになりました。

蒸気発生器の伝熱管の損傷(減肉腐食)(PWR)

PWRにおいては、原子炉圧力容器で発生させた高圧・高温の水を蒸気発生器まで導き、蒸気発生器のなかで高圧・高温の水と蒸気を作るための水を接触させることで蒸気を作り出し発電しています。ただし、高圧・高温の水と蒸気を作るための水が混ざることがないように、でも熱はしっかりと蒸気を作るための水へ伝わるように、蒸気発生器のなかは薄い金属の仕切りがいくつもある複雑な構造となっています。

このとき、蒸気を作るための水の方には、火力発電と同様に腐食の防止のためにリン酸ナトリウムという薬品を入れていました。

火力発電と同様の方法で運転をしていたので当時蒸気発生器が損傷するなどということは考えられませんでしたが、1972 年 6 月、関西電力美浜原発 1 号機の蒸気発生器の放射能漏れが発見されました(下図参照)。

電力会社や電機メーカなどが調べてみると、火力発電にはない蒸気発生器という複雑な構造の設備のなかでリン酸ナトリウムという薬品が逃げ場を失い煮詰まってしまい、そこから腐食と蒸気発生器の仕切りが薄くなってしまう現象(腐食減肉)が進行していたことがわかりました。

この対策として、リン酸ナトリウムという薬品のかわりに揮発性の薬品を用いることにより、「腐食減肉」を防止することで原発をより長く運転できるようになりました。

原発の作業員の被ばくの低減

原発では定期的に原発の運転を止めて設備の健全性を確認することになっていますが、当時は原発のトラブルが相次いで発生していたことから、高線量の現場で作業することが多かったため、被ばくの限度は守っていたものの、現場の作業員の被ばく線量が高くなることが課題でした。

また、原発の運転を開始してから、運転年数を経るごとに現場での線量が高くなることも、被ばく線量の低減のためには解決が必要な課題でした。

放射線からの被ばくを低くするためには一般的に、①距離、②時間、③遮へいという考え方があり、これらを組み合わせて作業に当たることが基本となります。

課題の解決のために、①距離と②時間に着目し、高線量の設備から距離を置くこと、作業時間がかからないように効率的に作業ができる環境を整えること、この2つを実現するために、高線量の設備のある原子炉格納容器自体を大型化(下図参照)することが考えられました。

参照:二井内等.改良標準型MARK-Ⅱ原子炉格納容器.1984年

これにより、高線量の設備から遠ざかることで被ばく線量が下がりますし、原子炉格納容器が大きくなることで現場が広くなり効率的に作業ができるようになり短時間で作業が終わるようになり、放射線を浴びる時間が少なくなり被ばく線量の低減につながったのです。

参照:二井内等.改良標準型MARK-Ⅱ原子炉格納容器.1984年

また、原発の運転を開始してから運転年数を経るごとに現場での線量が高くなるという課題については、原発の配管などで発生するサビが高線量の原子炉圧力容器のなかで放射性物質へ変化したクラッド(放射化腐食性生物)が、原発の設備を循環し設備に付着し貯まってしまうことが原因であると突き止めたことから、原子炉圧力容器に送り込まれ放射性物質となる手前で発生するサビを取り除くために、原子炉圧力容器の上流に「復水脱塩装置」などを設置することなどにより、クラッドが発生することを防ぎ、設備から放出される放射線を少なくすることで、現場での被ばく線量の低減につなげることができました。

「改良標準化」についての気になる口コミも要チェック!

ここでは原発の「改良標準化」の口コミを見ていきましょう。

原発の「改良標準化」について調べたところ、改良型原発の輸出や当時の危険性の指摘、「改良標準化」の”標準化”の撤廃について口コミがありました。